【JSTQB対策】ソフトウェアテストにおける、テストの終了基準

ソフトウェアテストにおける、テストの終了基準
テストの終了基準とは、テスト活動を完了したと判断するために満たすべき条件を明確に定義したものです。
ソフトウェア開発において「いつテストを終了すべきか」という判断は、プロジェクトの品質とコストを大きく左右する重要な決定です。適切な終了基準を設定し、正しく運用することで、リスクを最小化しながら高品質なソフトウェアを提供することができます。
終了基準の3つの側面
テストの終了基準は、以下の3つの側面から構成されています。
●完了度の測定
計画したテスト活動がどの程度完了したか
●品質レベルの評価
発見された欠陥の状況と品質特性の達成度
●リスク許容度の判定
残存リスクがステークホルダーの許容範囲内にあるか
JSTQBシラバスにおける典型的な終了基準
JSTQBシラバスでは、以下のような終了基準が典型例として挙げられています。
●テスト実行の完了基準
計画したテスト実行が完了していることが最も基本的な終了基準です。これには以下の要素が含まれます。
・テストケース実行率:計画したテストケースの90%以上が実行完了している
・定義済みカバレッジの達成:要件カバレッジ、機能カバレッジ、コードカバレッジが目標値に到達している
・必須テストの実施:重要度の高いテストケースがすべて実行されている
実務においては、スケジュールの制約により全テストケースの実行が困難な場合もあります。このような状況では、テストケースの優先順位付けが重要となり、リスクベースアプローチによって重要度の高いテストから順次実施することが求められます。
●欠陥に関する終了基準
未解決欠陥の件数が合意された制限内にあることも重要な終了基準です。
・重大度別欠陥数:致命的・重大・軽微な欠陥がそれぞれ許容数以下
・欠陥密度:プログラム行数や機能ポイント当たりの欠陥数が基準値以下
・残存欠陥の推定:信頼度成長曲線などを用いた潜在欠陥数の推定
欠陥の評価では、単純な件数だけでなく、欠陥の内容や影響度を総合的に判断することが重要です。軽微な欠陥が多数残っていても、ビジネスクリティカルな機能に影響がなければ、リリースが許可される場合もあります。
●品質特性の評価基準
信頼性、性能効率性、使用性、セキュリティ、その他の関連する品質特性を十分に評価していることが確認されている必要があります。
・機能性:主要機能が仕様通りに動作することの確認
・性能効率性:レスポンス時間、スループット、リソース使用量の基準達成
・使用性:ユーザビリティテストの結果が許容範囲内
・信頼性:連続稼働テストや障害回復テストの成功
・セキュリティ:脆弱性診断やセキュリティテストでの問題なし
アジャイル開発における適用
アジャイル開発では、テストの終了基準は「done(完了)の定義」と呼ばれます。これは、単なる「実装が終わった」状態ではなく、品質や動作の確認を含めて、チーム内で合意された「完了状態」を意味し、次のスプリントやリリースに安心して進むために非常に重要な役割を果たします。
まとめ
ソフトウェアテストの終了基準は、品質保証活動の成否を決定する大切な要素です。
重要なのは、終了基準を単なるチェックリストとして扱うのではなく、プロジェクトの特性や制約を考慮した実践的な指標として活用することです。定量的な指標と定性的な判断をバランスよく組み合わせ、継続的な改善を通じて、組織としての品質管理能力を向上させていくことが求められます。
テスト終了基準の適切な設定と運用により、リスクを最小化しながら高品質なソフトウェアを効率的に提供できる体制を構築し、ユーザーに価値のある製品を届けることができます。
JSTQB(日本ソフトウェアテスト技術者資格)は、ソフトウェアテストの専門的な知識と技術を認定するための資格です。この資格は、ソフトウェアテストのプロフェッショナルとして必要なスキルを証明するものとして、業界で広く認知されています。
JSTQBは、国際的な基準であるISTQB(International Software Testing Qualifications Board)に基づいており、日本国内のソフトウェアテスト分野における実務能力を向上させるための指針となっています。
株式会社NSITでは、ソフトウェアテストに従事するエンジニアの約9割が、JSTQBの資格を取得しております。