【JSTQB試験対策】レビューの6つの役割を完全解説!それぞれの責任と連携を理解しよう

JSTQB Foundation Level試験を目指して学習中の皆さん、こんにちは。
前回はレビュータイプについて解説しましたが、今回はもう一つの重要テーマ「レビューの役割」について深掘りしていきます。
レビューを効果的に実施するためには、参加者それぞれが明確な役割を持ち、責任を果たすことが不可欠です。特に形式的なレビュー(インスペクションやテクニカルレビューなど)では、役割分担が成否を左右します。
この記事では、JSTQBシラバスで定義されている6つの役割——作成者、マネージャー、ファシリテーター、レビューリーダー、レビューア、書記——について、それぞれの特徴と責任を明確に解説します。
レビューにおける役割分担の重要性
レビューは一人で行うものではありません。複数の人がチームを組み、それぞれの専門性や視点を活かすことで、より多くの欠陥を発見し、成果物の品質を高めることができます。
役割が明確に定義されていると、以下のようなメリットがあります。
・責任の所在が明確になる:誰が何を担当するかがはっきりしている
・効率的な進行が可能:各自が自分の役割に集中できる
・客観性が保たれる:第三者的な視点からのチェックが可能になる
・見落としが減る:複数の視点から成果物を評価できる
それでは、6つの役割について、一つずつ詳しく見ていきましょう。
1. 作成者:成果物に責任を持つ当事者
■役割の概要
作成者とは、レビュー対象となる作業成果物を作った人のことです。設計書を書いたエンジニア、コードを書いたプログラマー、テストケースを作成したテスト担当者など、その成果物に直接的な責任を持つ人がこの役割を担います。
■主な責任
・レビュー前の責任
レビュー対象となる成果物を作成する
成果物が一定の品質基準を満たした状態でレビューに提出する
必要な関連資料や背景情報を準備する
・レビュー中の責任
レビューアからの質問に答える
指摘された内容について事実確認を行う
必要に応じて意図や背景を説明する
・レビュー後の責任
指摘された欠陥を修正する
修正内容をレビューリーダーやファシリテーターに報告する
再レビューが必要な場合は対応する
■重要なポイント
作成者は他の役割との兼任に制限がある点に注意が必要です。特にインスペクションのような形式的なレビューでは、作成者はレビューリーダー、ファシリテーター、書記のいずれの役割も担うことができません。
これは客観性を保つための重要なルールです。自分が作った成果物を自分で公平にレビューすることは難しく、また議事進行や記録を担当すると、質問への回答に集中できなくなるためです
2. マネージャー:レビューの意思決定者
■役割の概要
マネージャーは、レビュー活動全体に対してマネジメント責任を持つ人です。プロジェクトマネージャーや開発リーダーなど、組織内で一定の権限を持つ人がこの役割を担います。
■主な責任
・計画段階の責任
レビューの実施を決定する
レビューに必要なリソース(人員、時間、予算)を割り当てる
レビューの目的と目標を設定する
レビュープロセス全体の改善を推進する
・実施中の責任
レビューの進捗状況をモニタリングする
問題が発生した場合に意思決定を行う
必要に応じてリソースの追加配分を行う
・実施後の責任
レビューの成果と費用対効果を評価する
プロセス改善のための施策を決定する
組織全体へのフィードバックを行う
■重要なポイント
マネージャーの最も重要な特徴は、実際のレビューミーティングには参加しないほうが良いという点です。
なぜでしょうか?理由は、マネージャーが参加すると、レビュー参加者に「評価される」という意識が働き、本来の目的である「欠陥の発見」よりも「自分の評価を守ること」が優先されてしまうからです。これでは率直な意見交換ができず、レビューの品質が低下してしまいます。
マネージャーは全体を俯瞰し、レビューが効果的に行われる環境を整える役割に徹することが求められます。
3. ファシリテーター:レビューミーティングの舵取り役
■役割の概要
ファシリテーター(モデレーターとも呼ばれます)は、レビューミーティングを効果的に運営する進行役です。会議の司会者のようなイメージですが、単なる進行だけでなく、レビュー全体の成功に大きな責任を持ちます。
■主な責任
・ミーティング前の責任
レビューミーティングの計画を立てる
必要な時間を見積もる
参加者のスケジュール調整を行う
レビュー資料が適切に準備されているか確認する
・ミーティング中の責任
効果的にレビューミーティングを運営する
時間管理を行い、予定通りに進行させる
参加者全員が発言できる雰囲気を作る
議論が脱線しないようコントロールする
対立する意見がある場合は調整を行う
・ミーティング後の責任
フォローアップ活動を確実に実行する
レビューの効果を評価する
次回レビューのための改善点を検討する
■重要なポイント
ファシリテーターはレビューの成功を左右する重要な役割です。経験が浅い人が務めると、時間管理がうまくいかなかったり、建設的な議論ができなかったりして、レビューの効果が半減してしまいます。
そのため、開発プロジェクトやテストプロジェクトのリーダー経験がある人、あるいはレビュー技法に関する十分な知識と経験を持つ人が務めることが理想的です。優れたファシリテーターは、参加者の意見を引き出し、対立を建設的な議論に変え、限られた時間で最大の成果を生み出すことができます。
4. レビューリーダー:レビュー活動の責任者
■役割の概要
レビューリーダーは、個々のレビュー活動全体に対して責任を持つ人です。ファシリテーターと似ているように感じるかもしれませんが、レビューリーダーはより広い範囲で責任を持ちます。
■主な責任
・計画段階の責任
レビューに対して全体的な責任を持つ
レビューアを含む参加者を選定する
レビューを実施する期間を決定する
レビューを実施する場所を決定する
レビューの目標と範囲を明確にする
・実施段階の責任
レビュープロセスが適切に実行されているか監督する
各参加者が役割を果たしているか確認する
必要に応じて計画を調整する
・完了段階の責任
レビューが終了基準を満たしたか判断する
レビュー結果を関係者に報告する
フォローアップの完了を確認する
■重要なポイント
レビューリーダーとファシリテーターの違いは、以下のように整理できます。
・レビューリーダー:レビュー活動全体の責任者(誰が参加するか、いつどこで行うかなどを決定)
・ファシリテーター:ミーティングの進行役(実際の会議をスムーズに運営)
小規模なレビューでは、一人がこの両方の役割を兼任することもありますが、大規模で重要なレビューでは分けることで、それぞれがより専門的に役割を果たせます。
レビューリーダーはレビューアを選ぶ権限を持つという点が非常に重要です。成果物の種類や目的に応じて、適切な専門知識を持つレビューアを選定することが、レビューの成否を大きく左右します。
5. レビューア:欠陥を見つける目利き
■役割の概要
レビューアは、成果物を実際に評価し、欠陥や問題点を見つけ出す人です。レビューの中核を担う役割であり、複数のレビューアが異なる視点からチェックすることで、より多くの問題を発見できます。
■主な責任
・事前準備の責任
レビュー対象の成果物を事前に確認する
チェックリストがある場合は、それに基づいて評価する
見つけた問題点や疑問点をリストアップする
必要に応じて代替案を検討する
・ミーティング中の責任
見つけた問題点を報告する
他のレビューアの指摘について意見を述べる
技術的な議論に参加する
自分の専門分野の観点から評価を提供する
・ミーティング後の責任
必要に応じて追加の確認を行う
修正内容の再レビューに参加する
■重要なポイント
レビューアにはさまざまな立場や専門性を持つ人が選ばれます。
・技術専門家:特定技術の深い知識を持つ人
・プロジェクトメンバー:システム全体の文脈を理解している人
・ビジネスアナリスト:業務要件の観点からチェックする人
・テスト担当者:テスト可能性や品質リスクの観点から評価する人
・使用性専門家:ユーザビリティの観点から評価する人
・セキュリティ専門家:セキュリティリスクの観点から評価する人
このように、異なる観点を持つ複数のレビューアが参加することで、多角的な評価が可能になります。一人では見落としてしまう問題も、別の専門性を持つ人の目には明らかに映ることがよくあります。
また、レビューアは自分の専門分野に基づいてチェックリストを事前に用意しておくと、レビューの効率が上がり、効果も高まります。
6. 書記:レビューの記憶を記録する
■役割の概要
書記(記録係)は、レビュー活動で発見された欠陥や決定事項を記録する人です。地味に見えるかもしれませんが、レビューの成果を形として残し、後の活動につなげる重要な役割です。
■主な責任
・レビュー期間中の責任
レビューアが個別に見つけた潜在的な欠陥を集約する
各欠陥の内容を分かりやすく記録する
欠陥の重要度や優先度を記録する
・ミーティング中の責任
ミーティングで新たに発見された欠陥を記録する
欠陥についての議論や結論を記録する
決定事項(修正方針、対応者、期限など)を記録する
未決事項や保留事項を記録する
参加者の重要な発言や意見を記録する
・ミーティング後の責任
記録を整理し、レビュー報告書を作成する
記録を関係者に配布する
欠陥リストを管理システムに登録する
■重要なポイント
書記は中立的な立場でレビューに参加することが重要です。自分の意見を主張するのではなく、客観的に全員の意見を記録することに徹します。
記録の質がレビューの質を左右すると言っても過言ではありません。曖昧な記録では、後で「どう修正すればいいのか分からない」「何が問題だったのか思い出せない」という事態が起こります。逆に、明確で詳細な記録があれば、作成者はスムーズに修正でき、将来同じような問題を防ぐための参考資料にもなります。
優れた書記の特徴
・要点を素早く理解し、簡潔に記録できる
・技術的な議論の内容を正確に理解できる
・中立的な立場を保てる
・タイピングやメモのスピードが速い
なお、最近ではレビューツールを使って自動的に記録を残すことも増えており、その場合は書記の役割が不要になることもあります。
まとめ
レビューにおける6つの役割について、それぞれの責任と特徴を見てきました。
作成者:成果物を作り、修正する当事者
マネージャー:レビューの実施を決定し、リソースを提供する意思決定者
ファシリテーター:ミーティングを効果的に運営する進行役
レビューリーダー:レビュー活動全体の責任者
レビューア:欠陥を見つけ出す評価者
書記:発見事項と決定事項を記録する記録係
これらの役割が適切に分担され、それぞれが責任を果たすことで、レビューは大きな効果を発揮します。
JSTQB試験では、「誰が何をするか」という問題が頻出します。各役割の固有の責任を理解し、特に混同しやすいファシリテーターとレビューリーダー、マネージャーとレビューリーダーの違いを明確にしておくことが重要です。
また、実務においても、これらの役割を意識することで、より組織的で効果的なレビューを実施できるようになります。ソフトウェアの品質向上のためには、レビューを「なんとなく」行うのではなく、明確な役割分担のもとで戦略的に実施することが求められます。
JSTQB(日本ソフトウェアテスト技術者資格)は、ソフトウェアテストの専門的な知識と技術を認定するための資格です。この資格は、ソフトウェアテストのプロフェッショナルとして必要なスキルを証明するものとして、業界で広く認知されています。
JSTQBは、国際的な基準であるISTQB(International Software Testing Qualifications Board)に基づいており、日本国内のソフトウェアテスト分野における実務能力を向上させるための指針となっています。
株式会社NSITでは、ソフトウェアテストに従事するエンジニアの約9割が、JSTQBの資格を取得しております。